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沿岸域での問題(1)有明海の視察から

カテゴリ 「海」から展開する情報プラットフォームとネットワーク
掲載日 2011.01.27
国際海洋研究所(IOI)日本支部 大塚万紗子

 日本の沿岸域で起こっている問題には世界にも共通する面があるとの観点から、LOICZ(Land-Ocean Interactions in the Coastal Zone:沿岸域における陸域-海域相互作用研究計画)委員長のNewton博士(ポルトガル・アルガルベ大学教授)と諫早湾の潮受け堤防締め切りの影響が問題になっている有明海、そして沿岸域の恵みに育まれて来た文化が廃れつつある五島を視察した。今回は有明海、そして次回は五島の視察について報告する。
有明海は潮汐差が日本一大きく、大潮時で約6m、小潮時でも約2.5m程度に達する。また日本に現存する干潟の総面積(約51,000ha)の約4割にあたる2万 haが存在し、ムツゴロウなどの有明海特産種(国内での分布記録が有明海に限られる種、ただし一部の種は八代海北部にも分布する)を有する特徴的な内湾である。

有明海の日の出

有明海の日の出

 近年、有明海では毎年のように貧酸素水塊が形成されており、二枚貝類や底魚などの水産資源減少の原因になっている可能性が指摘されている(環境省、2006)。その貧酸素化により衰退が著しいタイラギ漁を視察した。2010年1月20日8時15分、太良漁港を出発。1時間弱で漁場に到着し、2時間ほど漁が行われた。最盛期は150隻ほどもあったタイラギ漁の舟だが、貧酸素化による漁場の縮小などにより、昨年は40隻にまで減ってしまった。今年に入って近年では稀なほど好気条件が続き、70隻ほどがあつまるようになった。

一斉に漁場に向かう

一斉に漁場に向かう

潜水服をつけて

潜水服をつけて


 リーダーの舟が旗を掲げると一斉に漁が始まる。5~7分に一回、ヘルメットについたマイクから「はい」という合図があり、約200個のタイラギが入った袋があげられる。潜水者は漁の間は一度も水面に上がらず作業を続ける。

船上にあげられたタイラギは、ただちに身が取り出される
船上にあげられたタイラギは、ただちに身が取り出される

船上にあげられたタイラギは、ただちに身が取り出される

 身を取りだす作業はとても手早い。漁港に帰ってからも、市場にもっていく5時まで作業はつづく。貝柱をとりだし、ビラをきれいにする。タイラギの貝柱はホタテより小さいが、味は濃厚でおいしい。正月前はご祝儀価格で¥2800/kgまであがるという。

タイラギの貝柱

タイラギの貝柱

 14時からは諫早の潮受け堤防を視察した。Newton博士によると、オランダでは最近になって1950年代のハードエンジニアリングで造られた堤防のリニューアルにあたり、インドネシアの津波で証明されたソフトエンジニアリングを取り入れた防災対策に変わりつつある。コンクリートの壁は一見頑丈に見えて人々に安心感を与えるので、これをソフトエンジニアリングに変えるには合意形成が不可欠になる。
有明湾には午前に視察した漁民、干拓を必要とした人、堤防を必要とした人など、様々な人が関わり、利害が錯綜している。沿岸域ではこのような問題は例外的ではなく、「Coastal Governance」はLOICZでも重要なトピックとして議論が継続されている。有明海で様々な問題に対してどのように解決が図られるのか、関心がもたれるところである。

諫早湾の潮受け堤防

諫早湾の潮受け堤防

関連リンク
Contents
研究者発の海の話
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海と人との関わりを探究する授業作り
漁村の過疎化は海洋生態系の管理体制に影響を及ぼすか
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島嶼(とうしょ)における海洋保護区のあり方と意義
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海を守る、地球を守る
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海面上昇に対する沖ノ鳥島の維持
「海」から展開する情報プラットフォームとネットワーク
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うみあるきとは?-システム開発の目的と方針
現代の海賊問題と日本
沿岸域利用についての合意形成メカニズムの評価検討
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陸と海のつながりと海洋生態系
大学における学際的海洋教育研究
漁業をまもる先端技術
海底に眠る鉱山—熱水鉱床
海洋に関わる諸活動のコスト・ベネフィット評価
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